だけど愛してくれますか? サークル 夜もすがら 閏あくあ 自己肯定感の低い青年が放つ、切実な愛と執着の物語

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閏あくあ先生が描く『だけど愛してくれますか?』は、地下アイドルと敏腕マネージャーという、魅力的な設定の元に繰り広げられる、切なくも激しい愛の物語です。この作品の大きな魅力は、主人公であるアイドル・祭理(マツリ)のキャラクター造形にあります。彼は、いわゆる「ヤンデレ」や「裏の顔を持つ」といった典型的な属性ではなく、自己肯定感が極度に低い、内気で不器用な青年として描かれています。このリアルな等身大の悩みを抱えたキャラクターが、彼の純粋な愛と、それが暴走する様をより一層際立たせ、読者の心を強く揺さぶるのです。

物語は、主人公・桜木あおいが、自身がマネージャーを務める地下アイドルグループ「BED-ベッド-」のメンバーである祭理と深く関わっていくことから始まります。祭理は、抜群の容姿を持ちながらも、内気な性格が原因でなかなかアイドルとして花開くことができずにいました。そんな彼に唯一、光を与えてくれたのが、マネージャーのあおいでした。祭理にとってあおいは、自分を見つけ出し、支えてくれる、かけがえのない存在。この絶対的な信頼と感謝の念が、物語の根幹を成す「執着」へと発展していきます。

彼の愛は、純粋だからこそ危うい

祭理の行動は、一見すると強引で独占的なものに見えます。しかし、その根底にあるのは「愛されたい」という、あまりにも純粋で切実な願いです。彼は、あおいに「童貞だから色気がない」と揶揄されたことを気に病み、「童貞を卒業すれば、あおいに愛想を尽かされない」という、幼くも必死な考えに至ります。そして、あおいに「俺の童貞もらってください」と懇願します。この唐突で無垢な願いは、彼がどれだけあおいに認められ、愛されることを渇望しているかを示しています。

あおいは、彼の悲痛な叫びに、マネージャーとしての責任感から一度だけ体の関係を持ってしまいます。この「一度だけ」が、祭理の心を大きく揺るがすことになります。彼にとってそれは、あおいが自分を愛してくれた証であり、二人が「恋人」になった瞬間でした。しかし、あおいはあくまで仕事上の関係だと思っており、二人の間に認識のズレが生じます。このすれ違いが、後半の展開に大きな緊張感をもたらします。

祭理は、自信をつけ、アイドルとして輝き始めますが、その一方で、あおいへの執着を強めていきます。他のメンバーにあおいを試すような行動をされた際、彼は激しい嫉妬を露わにします。そして、あおいを力ずくで自分のものにしようと、強引な行為に及んでしまうのです。この時の祭理の行動は、以前の自信なさげな彼とは全く異なり、あおいへの独占欲と不安が入り混じった、痛々しいまでの感情が爆発しています。

リアルな心理描写と、心を揺さぶるエロティシズム

本作の大きな魅力の一つは、登場人物たちの心の動きが非常に丁寧に描かれている点です。特に、祭理の心理描写は秀逸です。彼は、愛されたいという願望と、再び捨てられるのではないかという恐怖の間で揺れ動きます。その葛藤は、涙を流しながらあおいに迫る姿や、「俺のこと捨てるの?」「俺にはあおいさんしかいないのに…」といった台詞に如実に表れています。彼の行動は、決して悪意からくるものではなく、純粋な愛ゆえの暴走であることがわかるため、読者は彼を憎むことができません。むしろ、その不器用な愛情表現に胸が締め付けられるような感覚を覚えるでしょう。

また、本作の性的描写は、ただのエロティシズムに留まらず、二人の関係性の変化を象徴する重要な要素となっています。物語の序盤、童貞だった祭理は、あおいに優しく愛撫され、クンニだけで射精してしまうほど純粋で可愛らしい姿を見せます。しかし、あおいへの執着を強めてからは、その行為は一変します。彼女を拘束し、下着も脱がさずにナマで挿入するなど、強引で激しいものへと変わっていくのです。この変化は、彼の心境の変化を克明に描き出しており、物語の進行を強く印象づけます。

さらに、この作品の絵柄の美しさも特筆すべき点です。閏あくあ先生の描くキャラクターは、表情豊かで、感情の機微を繊細に表現しています。特に、祭理が嫉妬に狂う姿や、涙を流しながら愛を乞う表情は、読者の心を鷲掴みにします。また、断面図を交えた性描写は、臨場感と興奮を高め、物語への没入感を深めています。

ハッピーエンドのその先に

物語の結末は、一見するとハッピーエンドのようにも、不穏な未来を予感させるようにも受け取れます。あおいは、祭理の独占欲を受け入れ、彼との秘密の関係を続けることを約束します。祭理は、愛するあおいを手に入れたことで、アイドルとしての自信をさらに深めていきます。しかし、この「幸せ」は、祭理の執着という不安定な土台の上に成り立っているものです。彼の「だけど愛してくれますか?」という問いかけは、物語が終わった後も、読者の心に深く残り続けるでしょう。

『だけど愛してくれますか?』は、単なるアイドルとマネージャーの恋愛漫画ではありません。自己肯定感の低い一人の青年が、初めて出会った愛に必死にしがみつき、その愛を独占しようと暴走する、切なくも純粋な執着の物語です。読み終わった後、祭理とあおいの未来について考えずにはいられなくなる、中毒性のある一作です。彼の純粋な愛と、それがもたらす不器用な情熱に触れてみたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

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